CIVILITYは、「礼儀正しさ」です。Thinkは「考える」です。「礼儀を考える」という著書が海外から発信されるとは! 日本人は、個人主義、利己主義といった欧米式な価値観が正しいことを教育で受けてきております。自分らしく、他人と同じである必要性はない、言いたいことをいうべき・・・結果、自分の都合が良いエゴが強くなり、相手を知ることもせず、低いコミュニケーション能力、低い交渉力へとつながっていると感じております。道場の子供たちと接していると非常に感じます。また、子どもだけではなく、学校の先生や親も、同じ感じだと感じてしまうことがあります。私だけでしょうか。一方、個人主義、利己主義といった欧米式な価値観は、流されやすい人には、個をつくりあげるという点では、大切だと思います。個を確立しながら、「礼儀」「礼節」を大切にすることが、高いコミュニケーション能力、高い交渉力へとつながります。 欧米人でも、教養がある人たちは、「礼儀」「礼節」を重んじ、物事の判断基準が厳しいだけです。私自身、グローバルで働く仲間(中流層以上)は、国民性の特色や感性があるものの、お互いに「礼儀」「礼節」を重んじます。だからこそ、ビジネスをうまく回し、お互いに発展ができると感じることができます。著者・クリスティーン・ポラス先生『Think Civility 「礼儀正しさ」こそ最強の生存戦略である』の出会いは、個人的に感じていたことをズバリ表現していた本です。 日本の武道や格闘技、官僚体質の組織、特に、伝統・歴史があるところは、礼儀の質が悪いと感じます。最初に述べたように、個人主義、利己主義といった欧米式な価値観から礼節よりも、自部のエゴを通すことが正しいと思っていること、そして、年功序列で、ポジションが高いから、リスペクトを強要し、リスペクトされることが当然だと考えている人が多いことです。日本の文化では「お辞儀」「挨拶」は、お互いが敬意をもったコミュニケーション手段です。学校でも、道場でも、職場でも、先生と生徒、上司と部下であっても、お互いが挨拶をしあうことを当然に行います。私は、世界で最高の文化をもった日本の礼儀・礼節は、トップクラスだと思います。それを改めて認識してほしいですし、日本文化の礼儀・礼節が個々の人生、組織、国が豊かにできる武器だということを改めて認識してほしいと思います。 『Think Civility 「礼儀正しさ」こそ最強の生存戦略である』は、礼儀礼節の重要性を科学的に示した本です。以下の本書について、ご紹介しながら、所感を入れていきます。
絶対に知っておきたい「無礼な態度がもたらす5つの悲劇」
礼節が欠けることが個人や組織や社会全体に対していかにマイナスであり、その怖さを5つの悲劇として紹介しています。
無礼な態度がもたらす5つの悲劇その1「人の健康を害する」
無礼な態度によって相手の死亡リスクが上がります。確かに気分を変えればストレスがたまってしまい体には悪いです。この本で紹介されている試験によると勤務時間の長さや仕事の負荷、与えられている権限の大きさ、これらは授業との直接的な関係はなかったそうです。 ところが一緒に働く人たちの態度が協力的友好的であると、これについては授業との相関が見られたと言われています。特に中年の方の場合は職場の人との関係が良好な人とそうでない場合との違いでは、死亡リスクが約2.4倍違うということが示されました。 ポラス先生のお父さんも健康被害に遭った一人です。彼のお父さんはとにかく元気で明るくて健康的で家族の前では一切口を吐かない、無敵のアメリカンヒーロー的な存在でした。職場の上司がとんでもなく、部下を罵倒し侮辱するだけではなく、お客さんに対しても無礼な発言をする人だったそうです。とにかく異常ともいえる人物でした。しかし、お父さんはどんな時でも常に家族のことを第一に考えていました。4人の子供たちを大学に行かせてやりたい、その一心でどんなに上司から罵倒されようがプライドをズタズタにされてでも、歯を食いしばって、その上司のもとで10年以上働き、家に帰れば疲れもみせず何事もないようにいつものヒーローを演じるわけです。しかしどんなに強いお父さんもひとりの人間です。長年のストレスで倒れ入院し心臓発作が起こってもおかしくない状態にまで衰弱してしまいました。一方そのブラック上司はどうなったか?なんとその会社の優秀管理職として表彰されてました。信じがたい話ですが、事実です。 ポラス先生がなぜ20年にも長きにわたって職場の無礼を研究し、世界中に礼節の重要性を訴えているのかそれはきっと最愛のお父さんの旨を話したいそんな思いがあるのかもしれません。
無礼な態度がもたらす5つの悲劇その2「経済損失をもたらす」
アメリカ心理学会によりますと職場のストレスによってなんと年間5000億ドルもの経済損失がアメリカ国内で発生しているということが示唆されています。仕事のストレスが原因で働けなくなったら労働力が減ります。病院に通わないといけなくなったら労働日が減ります。この流れは個人にとっても会社にとっても国にとってもただの損失でしかないです。 さらにアメリカ国立労働安全衛生研究所によると日々仕事にストレスを感じている人はそうでない人に比べて医療コストが46%高くなるという報告があります。つまり仕事のストレスというのは寿命も減り、お金も減り、非常に恐ろしい結果をもたらします。 そして大事なのは、特に経営者の方や管理職の方が絶対に知っておかないといけないお話です。ポラス先生が行った17業界800名の管理職従業員を対象にした調査によると所ウバで誰かから無礼な態度をとられた従業員のうち約半数が意図的に仕事にかける労働力時間質を下げていることが分かりました。これは極端に言えば100人雇っていても礼節が損なわれている状態だと、実質50人しか働いていないってことです。これはとんでもない喪失です。確かに月曜日の朝から上司や同僚から小言を言われ、気持ちよく働けるはずもありません。 軽いつもりで言った言葉が、組織全体の生産性を著しく低下させることを心に留めておかないといけないです。
無礼な態度がもたらす5つの悲劇その3「人の思考力や集中力を下げる効果がある」
確かに非常に納得できる話です。ただ一つ注意しておきたいのが全然たいしたことのないこれくらい平気だろうというレベルの無礼さでも相手の集中力を低下させる威力があります。
例えば冗談半分で軽くいじるとかそういった声も決して侮ってはいけないというわけです。
無礼な態度がもたらす5つの悲劇その4「認知能力を下げる」
例えば、大勢の前で上司からミスを指摘され先輩同僚みんなから笑われた経験とかないでしょうか?周りはたいしたことないみたいに思っていても言われた方は結構こたえます。皆の前で恥をかかされるとどうしても引きずってしまいます。それが認知能力判断力の低下につながり、結果小さなミスが大きなミスを引き起こします。
社内の報告書の誤字脱字くらいならまだ許容範囲ですが、医療の世界だったら人命にかかわるので大事です。チームプレーが重要視される業務においては、よく自分の言葉や態度に注意を払っておく必要があるということです。 無礼な態度がもたらす5つの悲劇その5「人を攻撃的にさせる」 例えば誰かから屈辱的な発言を受けたとします。お前はこんなこともできないのかみたいな発言を想像してください・・・。誰だって、腹がたちます。屈辱的な発言を浴びてしまうと他人に協力しようという気持ちを持った人が被験者全体の1/3の割合にまで減ってしまい、さらに他人と何かを分かち合おうという気持ちを持った人の割合も半減します。つまり、自分がよくなればいい、こういう人の割合が増えるということです。ここまで来ると実質チームの崩壊です。無礼さというウイルスが蔓延するともはやチームビルディングどころではないです。
礼節のメリット
正直礼節のメリットについては挙げたらキリがありません。一つ挙げるとするならば、人から声がかかりやすい、この一点に尽きます。 とても仕事ができるけど、いつもクールで挨拶もしなければ、言葉遣いも悪い人を想像してみてください。声をかけづらいです。仕事の能力は普通でも、いつもニコニコしてて誰に対しても自然にあいさつしている人の方がちょっと教えてあげようとか、一緒にご飯行こうと言われます。 能力以前に、まずは礼節をしっかりして話しかけやすい人だと思われており、これが非常に重要です。そして、話しかけられやすいポジションであれば、自分の人生の成功確率が上がります。声をかけられやすい立場にいれば、新しいポジション、新しいプロジェクトのチャンスがつかみやすいです。良き仲間を得て、好きな仕事、給料アップにもつながってきます。良い就職、転職の案件、面白そうなスタートアップが転がってきます。同業他社や得意先からうちで働かないかと、ヘッドハンティングされることだってあります。つまり礼節によって話しかけられやすい状態にしておくことは、連鎖的な幸運を引き寄せる最強の生存戦略です。 しかし、気を使うより能力より、一生懸命勉強して、個人で結果を出せばよいと考える人が多いかもしれません。例外的に成功する、一部の転機や偶然そうなる人も確かにいます。ただ、成功者の多くは、人に助けられたり、助言によって徳を得ることが多いです。 人も組織も、継続して調子がいいときはないです。人生山あり谷あり、予想外の失敗障壁、自分一人の力ではどうしようもない苦境、こういうことが必ず訪れます。沼に足がはまって動けないとき、これまでの自分の行い、礼節の真価が問われます。あなたのためならと仲間が駆け寄って引き上げてくれるか、それとも、仲間だと思っていた人たちから地獄に落ちろ!と思われるか、普段の礼節にかかっています。 礼儀正しさは、人から人へウイルスのように伝染する特徴があるということです。これは見落とされがちですが非常に重要な点です。 トップの礼節がしっかりしていると、その周辺の人もそうも影響を受けるレイズが全然していくプーレーザもまた然りというわけです。中国の古典である論語には「君主は家臣に対して礼節を持って丁寧に接すること」と言います。リーダーこそ礼節を心がけるべきであるというのは紀元前から言われ続けている偉大な教えです。 3つの原則があるのでそれを覚えておいて欲しいと言われます。以下、順番に説明します。
礼節三原則の1つ目「笑顔を絶やしてはいけない」
子供は平均1日400回笑い、大人は1日20回笑えば多いといわれています。
いつも笑顔の人の方が話しかけやすいというのは改めて説明する必要はありませんが、実は私たちの寿命と関係する可能性もあるんだよと本書では断言しています。
メジャーリーガーの写真を調べ上げて笑顔が少ない選手とそうでない選手の平均寿命を調査した結果、
・ 笑顔が少ない選手の平均寿命は72.9歳
・ 笑顔多い選手の平均寿命は80歳
つまり笑顔の習慣だけで7年も寿命が違ってきます。
礼節三原則の2つ目「相手を尊重する」
「相手を尊重する」という行為は、挨拶からだと感じます。 <上層部の姿勢> タワーズワトソンという有名なコンサルティング会社が行った世界規模の調査の結果は、「社員のやる気を最も左右する要素は上層部の姿勢」でした。 組織の中で上の立場にいる人は下の人といかに良好な関係を築ければいいかが最重要ポイントであると強調されています。実際には相手の存在を認め、尊重するというこの簡単そうなことが意外にできない、部下を軽んじる見下してしまうリーダーが非常に多いことが多いことも事実でした。 人に敬意を払えない失礼な人物だと断定されないためにはどうすればいいのかと説いています。確かに、組織ですと、リーダーシップをとってやる仕事とルーチンワークをする仕事が同じではないですし、仕事に対する構え方、思考、意思決定基準が違います。部下と同じ判断や目線で意思決定をしていたら、組織はつぶれてしまいます。部下は、同じ目線、例えば、必死に働いている部下がいれば、その部下は、上司には同じ、もしくは、それ以上、働いている上司を賛美する傾向があります。それは、急成長をしている組織の管理職は、やってはいけないと言われていることでもあります。お互いの立場が違っていても、上司はうまく立ち振る舞う必要性はあります。まさに、上に立つ人の姿勢だと思われます。 具体的に申し上げますと ・ 誰かと10フィート(約3メートル)以内に近づいたらもタイミングで目を合わせる ・ 誰かと5フィート(約1.5メートル)以内に近づいたら「今日はとかお疲れ様です」など挨拶をする ・ 3m で目を合わせ1.5m で挨拶これだけです ちなみにルイジアナ州のとある代表位ではこの習慣を院内のガイドラインとして定めたことによって礼節文化が一気に組織全体に伝染し広がっていったそうです。その結果来院される患者さんから、病院の感じが良いと言われ、患者満足度もライン患者数も増加したそうです。人に敬意を払う週間もリーダー自らが率先してやるべきことです。
礼節三原則の3つ目「人の話に耳を傾ける」
人の話に耳を傾けるということです。何よりまず聞く体制を整えることが一番大事です。その上で人の話を遮らないことです。 学生時代に、私の帰国子女の友達は、自己主張をしまくります。ただ、社会人になって目立って出資しているかというと違います。最初に言ったエゴを持った自己主張は、社会では通じないということです。自分から言いたいことを言うではなく、6割から7割は話を聞く姿勢が大切です。
ワンランク上の礼節を身につけるための5つの心得
上の3原則が守れるようになったところで、ポラス先生が提示するのは、「ワンランク上の礼節を身につけるための5つの心得」を説いています。 心得1:与える人になる 心得2:成果を共有する 心得3:褒め上手な人になる 心得4:フィードバック上手になる 心得5:意識を共有する 仲間として、尊重し合う方法です。日本のお辞儀、会釈、それに、プラス、何か相手とコミュニケーションをとる普通のことです。 礼節を欠くとは、個人や組織や社会全体にマイナスです。礼節を意識すれば、すべてプラスに変わるそのことを本書は説いています。改めて、礼儀というものを考える場となればと思います。
補足:クリスティンポラス先生
本書の著者であるクリスティンポラス先生も過去に企業で働き、礼節を欠いた言葉や態度によって傷つき人生を狂わされた過去があります。無礼な行為の悪影響について20年間という時間をかけて研究し続けてきました。クリスティンポラス先生は、ジョージタウン大学マクドノースクールオブビジネスの准教授で、職場の無礼な人、パワーハラスメントをするような人たちが組織で働くと悪影響を与えることを世界的に広く知らしめました。 Google、 ピクサー、国際連合世界銀行などで講演、コンサルティングをするといった世界中から注目を浴びている人物です。 ISSPで行われた2015年に行われた国際社会調査プログラムの結果を見ますと、自分の職場では同僚との関係は良いと思っている人の割合は調査対象の37カ国中なんと日本が最下位だったそうです。アメリカは28位、さらに全国の労働局に寄せられる職場でのいじめ嫌がらせに関する相談件数は2017年度には約7万2000件、18年度には約8万3000軒と増え続けています。
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